AWS Consolidated Billingってどうやって計算されるの?
Consolidated Billingとは
Consolidated Billingは、AWSの契約アカウントをまとめて1つの支払いにすることができるサービスです。当社では、10以上のアカウントがあり、契約アカウントごとに利用明細を経理担当へ提出していました。Consolidated Billingを活用することによって、親となる1つの契約アカウント(支払いアカウント)から子となる全ての契約アカウント(リンクアカウント)をまとめて管理することができます。支払いアカウントでは、全てのリンクアカウントの明細を閲覧することができますので、どの契約アカウントがどの程度使用しているか一目で分かりますし、合計額もすぐに分かります。
Consolidated Billingへの申し込み
Consolidated Billingへの申し込みは、AWSにログインすればメニューからすぐに選択できます。申し込みしたアカウントが支払いアカウントとして親の役割をします。次に、支払いをまとめたいアカウントに「支払いまとめリクエスト」を行います。リクエストをメールで受け取ったアカウントは、リンクから承認をして完了です。これだけで支払いが1つにまとまります。元々のクレジットカード番号はバラバラで構いません。支払いアカウントへまとめて請求が来ます。
Consolidated Billingのメリット
Consolidated Billingを使うメリットは大きく3つあります。3つ目は特に重要です。
- 複数の契約アカウントを1つの請求書でまとめられる。
- どのアカウントがどの程度の使用量かまとめて閲覧できる。
- 全てのアカウントの合計使用量からボリュームディスカウントが適応される。
どんなときにConsolidated Billingを使うの?
組織内でAWSを契約するのであれば、1つの契約アカウントで全て管理してしまおうと思うかもしれませんが、部門毎やチーム毎に独立して管理したい場合も多いかと思います。当社では、プロジェクト毎に原価計算をしていますので、毎月のAWS使用料金は担当プロジェクト毎に計上される必要があります。そんなとき、AWS契約アカウント毎に管理者を決め、月々の使用料金を経費として計上して、実際の支払い時は親となる支払いアカウントが使用量を確認するという使い方が良いかと思います。AWS契約アカウントを作るだけでしたらお金は掛かりませんから、同じクレジットカードでいくつ作ってもたぶん大丈夫ですw。
ひとつ重要なポイントですが、AWS契約アカウントで親子関係になったからといって、アカウント内で管理しているインスタンス情報などは一切見れません。あくまでも、支払いに関するオプションです。ですから、お客様が契約したアカウントを自社で支払い代行するときにはConsolidated Billingを使うのが最も手続きが楽に済みます。
Consolidated Billingが適応される日時
例えば、A1とA2というアカウントが存在したとします。3月1日にA1とA2がAWS契約をしました。次に、3月10日にA1が支払いアカウントとなり、A2をリンクアカウントとして登録しました。このとき、A2は3月1日から3月10日の切り替え時刻までを通常通り支払います。また、A1は、3月1日から3月31日までと、A2の3月10日から3月31日までの使用料金をまとめてしはらいことになります。
支払いアカウントは、リンクアカウントの日々の使用量について確認ができ、使用レポートをダウンロードすることができます。リンクアカウントは、自身の使用量を確認することはできますが、親となる支払いアカウントの実際の支払い情報について見ることはできません。
Consolidated Billingのボリュームディスカウント
実際にどのようにしてボリュームディスカウントが適応されるか見てみましょう。A3とA4というアカウントが東京リージョンでデータ転送(アウト)を行うことを想定します。A3は5TB通信を行いました。A4は8TB通信を行いました。別々に支払い金額を計算すると以下のようになります。
- A3 : 5TB * 1024GB(単位変換) * 0.201GB(単価) = 1029.12ドル
- A4 : 8TB * 1024GB(単位変換) * 0.201GB(単価) = 1646.592ドル
- 合計 : 2675.712ドル
これを支払いアカウントでまとめると、10TBを超えた分から割引が適応されます。実際の支払いは以下となります。最初の1GBが無料枠ですが微々たる額ですのでここでは割愛します。ちなみに、Consolidated Billingをした場合には1つだけ無料わくが適応されますので気をつけてください。今回の合計利用量は、5TB+8TB-(1GB)で合計約13TBです。最初の10TBが通常料金で、残りの3TBが割引料金が適応されます。
- A3 : 10TB * 1024GB(単位変換) * 0.201GB(単価) + 2TB * 1024GB(単位変換) * 0.158GB(単価) = 2058.24 + 323.584 = 2381.824
- A4 : ゼロ
合計金額を見比べますと、2675.712ドルと2381.824ドルとなり、今回のケースでは、まとめ支払いは個別支払いに比べて約89%の支払いで済みました!ここで気になるのが、合計金額が割り引かれた場合に、それぞれのアカウントへの請求割り振りはどうなっているかです。答えは、使用量の割合で決まります。A3が5に対してA4が8の割合です。ですから、以下のような名目上の請求金額となります。
- 2381.824 * 5 / 13 = 916.086ドル
- 2381.824 * 8 / 13 = 1465.738ドル
それぞれいい感じに割り引かれましたね!
Consolidated Billingのセキュリティ
Consolidated Billingの支払いアカウントは、複数のAWS契約アカウントをまとめる非常に重要なアカウントです。ですから、パスワードを長くしたり、二要素認証を適応するなど厳重に管理することをお勧めします。
Consolidated Billingからの削除
支払いアカウントからリンクアカウントを削除することも簡単にできます。画面からリンクを削除すれば完了です。使用料金計算は直ちに反映されます。
Consolidated Billing間のアカウント移動
A5,A6,A7という3つのアカウントがあるとき、A5のリンクにA6があり、A6をA7のリンクに移動する場合を想定した手順は以下になります。
- A5からA6のリンクを削除
- A7がA6へ支払いまとめリクエスト
- A6が承認
Consolidated Billingで支払いアカウントからリンクアカウントへの変更
A8,A9,A10というアカウントがあるとき、A8のリンクにA9があり、A8をA10のリンクに移動する場合を想定した手順は以下になります。
- A8からA9その他全てのリンクを削除。リクエスト中のものもキャンセル
- A10がA8へ支払いまとめリクエスト
- A8が承認
Amazon EC2 Reserved InstancesとConsolidated Billingの組み合わせ
Reserved Instanceは、1年または3年分のインスタンス確保料金を前払いすることで、格安でインスタンスを利用できるサービスです。Reserved Instanceの購入時は名目上で購入したアカウントに課金されますが、利用時には全てのアカウントに適応されますので、予約したけれど使わなかったということがありません。
例えば、B1とB2というアカウントがあります。B1のリンクにB2があります。B1は6インスタンス使っていて、B2は3インスタンス使っています。ここで、B2は5つのReserved Instanceを購入しました。さてどうなるでしょうか。重要なポイントは、Reserved InstanceはConsolidated Billingのアカウントに適応されるということです。ですから、全部で9インスタンスの内、5インスタンスがReserved Instanceで、4インスタンスが普通のものとなります。これを例として表したものが以下となります。
- Reserved Instance : 5 * 0.011ドル(t1.micro) = 0.055ドル/時
- Normal Instance : 4 * 0.027ドル(t1.micro) = 0.108ドル/時
- 合計 : 0.055 + 0.108 = 0.163ドル/時
もし仮に、Consolidated Billingを使っていなかったとするとそれぞれ以下のようになります。
- B1 : 6(Normal Instance) * 0.027ドル(t1.micro) = 0.162ドル/時
- B2 : 3(Reserved Instance) * 0.011ドル(t1.micro) = 0.033ドル/時
- 合計 : 0.162 + 0.033 = 0.195ドル/時
時間単価で83.6%になりました。で、結局、名目的にそれぞれ請求される金額がどの程度かと言いますと、使っているインスタンスの割合となります。9インスタンスのうち6つ使っているB1は2/3、3つ使っているB2は1/3となります。
- B1 : 0.163ドル/時 * 2 / 3 = 0.109ドル/時
- B2 : 0.163ドル/時 * 1 / 3 = 0.054ドル/時
最後に注意があります。Reserved Instanceは、AZをはじめインスタンスタイプやOSなどを全て合わせる必要があります。1つでも合っていないと適応されません!!
Amazon RDS Reserved DB Instancesも同様です。
AWS Premium SupportとConsolidated Billingの組み合わせ
AWSプレミアムサポートは、AWS契約アカウント毎に加入するサービスですので、Consolidated Billingにしたとしてもそれぞれ加入する必要があります。
まとめ
Consolidated Billingを活用して複数のAWS契約アカウントをまとめて管理することによって、請求が1本化するだけでなく、ボリュームディスカウントやリザーブドインスタンスの適応など、お得な事がたくさんある事が分かりました。Consolidated Billingを使ってやりくり上手になりましょう!!